カナダ人のスティーブは、驚くほど何度も日本に足を運んでいて、毎回いろんな都道府県を回りつつ、必ず金沢も訪れてくれます。
ある時スティーブは、予約せずに来てくれたことがありました。チェックインの15時までは、事務仕事や館内のメンテナンスなどでフロントが不在になる時間が時々ありますが、作業を終えてフロントへ行くと、彼は静かにソファに座っていました。それがスティーブであることにはっと気付いた私は、
「スティーブ!待たせてごめんなさい、何度もベルで呼んだよね?」と聞くと、
「問題ないよ、この時間はチェックアウト後の処理やチェックインまでの準備でホテルは忙しいだろうと思って待っていたよ」と、なんとも奥ゆかしい返答が返ってきました。

彼は何度か素敵なお土産を渡してくれました。楓の葉の形をした瓶に入ったとてもかわいいメープルシロップは、すぐに翌日の我が家の朝食に並びました。米粉のパンケーキと共に初めてメープルシロップを口にした幼い娘たちは、口に入れた瞬間にキラキラの顔で喜んでいました。今や彼女たちはカナダの国旗も真似して描けるほど、メープルシロップのファンです。(コストコで特大の瓶をせがまれたときはさすがに躊躇しましたが)
スティーブは抽象的な作品を撮るアーティストでもあり、ある時には小さなアートピースをくれました。シンプルだけど微妙な色の差を表現した可愛らしいアートは、小さな額に入れて飾ることにしました。
彼は決して新しくも豪華でもないこのホテルを、ホームのように感じられて好きだと話してくれました。その言葉は、今も私の中に残っています。
「ところでスティーブ、日本のどんなところが一番好きなの?」
「人だよ」