「TOMATO HOUSE」と書かれた看板の横にある、ちょっと重たいガラスの扉を押し開ける。
夕食の時間よりも30分早く入ってきたのは、今年ももう4か月ほど岡ホテルで暮らしている二人。いつもの焼酎を持って、入口から一番近いソファ席に座ると、慣れた手つきで自分たちの水割りを作り始めた。

テレビではまだニュースが流れている。外仕事の彼らは、天気予報を見ながら明日の仕事のことを考えているのだろうか。
厨房の中からは美味しそうな匂いが漂ってくる。カチャカチャ、トントン、ジュワー。
「今用意するし、もう少し待っとって~!」ひょっこり顔を出した女将が言うと、「あいよ~っ」と返事をした。
18時半ごろになると、メインの料理が運ばれてきた。そのあとすぐに、お刺身を盛った小鉢も並ぶ。二人はそれをアテに、もうしばらく焼酎を飲み続けた。
家族よりも長い時間を共にする二人は、ずっとしゃべっているでもなく、かといって無言でもない。テレビを見たり、ぽつぽつと言葉を交わしたりしながら、いつもの夕食を食べている。
そろそろ焼酎もなくなったのだろう。二人は席を立つと、今度は自分でご飯とお味噌汁をよそう。最後は温かいご飯とお味噌汁で締めて、今日の夕食を終えた。
岡ホテルの長期滞在は、基本的に朝夕2食付き。毎日18時をすぎると、バラバラと食堂に降りてきて、日替わりの夕食を食べる。何週間、何か月と滞在する人たちにとっては、これもすっかり毎日のルーティンになっている。
長く泊まっていると、食堂に持ち込まれるのは焼酎だけではない。
山で仕事をすることも多い二人は、春になると仕事帰りに山菜やタケノコを持って帰ってきてくれることがある。そんな日は、厨房でさっと天ぷらにして、その日の食卓に一皿追加。居合わせたお客さんにも少しずつおすそ分けする。
またある日は、別のお客さんが休日に海で釣ってきたキスを持って帰ってきた。せっかくなので捌いてフライにした。
もちろん、人手に余裕のある時に限った話ではあるが、長く一緒にいると、たまにこんな夕食の日がある。
そして次の日もまた、夕食の時間より少し早く、あの重たいガラスの扉が開く。